法廷の中に入ると、誰もいなかった。
もしかして入っちゃダメな回だったか?
ちょっと不安。
しかし無人の法廷は奇妙なまでに静かだなあ。
あ。
これってチャンスかも。
せっかくだから、ホンモノの証言台に立ってみようか。
せっかくだから、エアギターのひとつもプレイしてみるか。
傍聴席からの入口扉は『それボク』撮影用のセットで見たのと同じつくりだ。
よっしゃ、行くぞ。
はじめての証言台にフェード・イーーーーーーーンッ!
と、そこに裁判所の方(たぶん事務官)が現れた。
いえいえ。
どんな素材でできているのかなあ、ってちょっと触ってみただけですよ。
うん。なかなかいい木を使っていますね。
いやあ、さすがだ。
…チッ。
* * *
そうこうしているうちに被告人が登場した。
なんだか元気がないヤツだ。
生のオーラを放ってない。
まあ元気マンマンなワケはないか。
でもジーッとうつむいていて何を考えてるのか分からない。
ネクラ?
たぶん友達にはなれないタイプだ。
続けて検察官が入ってきた。
おッ。
メガネくん。
ひさしぶり。元気だった?
・・・と心の中であいさつ。
裁判官が入ってきた。
おッ。
これはこれはMrクールガイ。
最近どうですか?いいカンジに裁いてますか?
・・・と心の中であいさつ。
顔見知り(一方的に)の二人が揃ったので微妙に嬉しくなる。
しかし傍聴人が誰も入って来ないなあ…。
と、思っているうちに裁判が始まってしまったよ。
オーディエンス、ボクONLY!?
これは責任重大だぞ!
・・・聞いてるだけなんだけど。
それでも、がんばれボク!
このミョ?な緊張感に耐え忍べ、ボク!
あ、クシャミが出そう・・・いやダメだ我慢しろ、ボク!
そんなことをしたら大注目をあびてしまうぞ。
と、そこに、ひとりのおじさんが傍聴席に入ってきた。
・・・よく来てくれました。
あなたに会えてうれしいです。
本当はひとりぼっちで心細かったんです。
* * *
メガネくんの相変わらず早口なBOW★CHINGがはじまった。
今回の事件はタクシーの無賃乗車だ。
神奈川県から東京へ2万円。
運転手さんに怒られて、暴れるでもなくすんなり警察署に突き出されてアウト。
聞けばこの男、無賃乗車の常習犯。
前科2犯。ぜーんぶタクシー無賃乗車。
ちなみに今回捕まる3日前まで、無賃乗車の罪(これって詐欺罪なの?)で刑務所に入っていた。
…ていうか、なぜ乗る!?
うーん…。
それにしても、なんだかしょうもないなあ。
いやしかし!
犯罪は犯罪だ。
きっちりと裁いてもらわなくては。
ムリヤリでも気分を盛り上げていくぞ!
『連続タクシー無賃乗車事件発生!!犯人は誰だッ!なにが目的なんだッ!?』
犯人はコイツ。
目的はとくにナシ。
うーん…。
やっぱり盛り上がりに欠ける。
しかしこの被告人、ダラけた態度でちょっとムカツクかんじだな。
と、そのとき!
傍聴アミーゴのおじさんがチラッとこちらを見た。
え。
うそでしょ。
そんな…まさか…。
おじさん「悪いね。おじさんはもう無理だ。あとのことは頼んだよ」
と、目でボクに訴えかけて、さっさとひとりで退場しやがった。
NOOOOOOOO!
カンバック…おじさんカンバーーーーック!
もはや法廷から出るに出られなくなってしまった。
ノー・ウェイ・アウト。
最後までいるしかないじゃん。
もともと特別なオンリーワン。
傍聴席でもオンリーワン。
裁判長、トイレに行くフリして帰ってもいいでしょうか?
いやいや、ダメだろ。
だってボクはこの裁判のたったひとりの見届人なんだ。
THIS IS MY COURT!
これは責任重大だぞ!
がんばれボク!
・・・聞いてるだけなんだけど。
次回へ続く!
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