第2の傍聴 その2「ダメオーラ全開、とっちらかし系弁護人登場!」2006年11月21日
これまで全く裁判と縁がない人生を過ごしてきた“ぜんぜん法律に詳しくない映画宣伝マン"が裁判を傍聴する映画宣伝マンブログ!大好評連載中です!!

弁護人ことダメ男くんがとっちらかりながら、被告人に質問(*注)していく。
被告人の言い分はこうだ。
会社の同僚Aが覚醒剤を持っていたので、やめさせるために取り上げた。
「Aの目が明らかにシャ●中みたいやったんですわ。前からやってるって聞いてたし」
えらいコテコテの関西弁だ。
こういう場面で聞く関西弁は、雰囲気にそぐわなすぎて、いっそのこと斬新だった。
そして、シ●ブという単語を初めてリアルな会話で聞いたことに、軽くショックを受けた。
「持っとるモンぜんぶ出せって、言うたんです。そしたら案の定持ってました。あいつ、●ャブとガスやってたんですわ」
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・・・ガス?
ガスってなに?
聞いたことない。
何かの隠語か?
裁判長も知らないらしく「ガスとは何ですか?」とかわりに聞いてくれた。
「百円ライターとかあるでしょ。あのガスを吸いよるんですわ。安上がりでええらしいんです。 そんなことしてなにがオモロイのか、さっぱり分かりませんけど
・・・ほんとにさっぱり分からない。
しかし、そんなことする人がいるとは・・・世の中っていろんな人がいるんだなあ。
さておき。
このとき取り上げた覚醒剤は、そのへんに捨てるわけにもいかず、自分の財布にしまっておいた。
それから半年後、大阪の覚醒剤ルートを捜査していた警察官に、任意で事情聴取を受けた。
その時に、財布の中の覚醒剤のことを思い出して、警察官に自ら提出した。
財布の普段使わないジッパーの中に入れたままで、持っていることすら忘れていたのだと言う。
自分で使うために持ってたんじゃないのか、と検察官がツッコんだ。
被告人「使うつもりなら、とっくに使うてますよ」
そりゃそうだ。
財布の中に入れたまま忘れてしまう。
これはボクもよくある。
とくに普段使わないポケットは、ちょっとしたタイムカプセルだ。
キャバレークラブのおねえさんにもらった名刺を、財布の普段使わないポケットに入れて、そのまま1年くらい忘れちゃってたこともある。
中身がおねえさんの名刺と覚醒剤では全然違う。
でも、覚醒剤を所持することへの罪悪感が欠如していたなら、忘れちゃうこともあるのかもしれない。
と、ボクは思った。
ちなみにキャバレークラブはお付き合いで行ったのであって、普段ボクはそういうところへは行かないし、そういうところはあまり好きではない。と言っておきたい。
さておき。
…ダメ男くん、これって同僚Aに証言させればいいんじゃないのかな?
ダメ男「Aの居場所が分からず、連絡が取れていません」
被告人「いや、Aはいま**にいますよ」
ダメ男「エッ…そうなの?」
ああ、やっぱダメだ。
Aから覚醒剤を取り上げたその場には、同僚B・C・Dの3人がいて、一部始終を目撃している。
…じゃあ、このBかCかDを証人として呼んで、証言してもらえばいいんじゃないの?
ダメ男「BもCもDもまだ連絡が取れていません…ちょっと時間がなくて」
ウワーーーッ!コイツ、ほんとにダメだ。
***

この事件のポイントは、覚醒剤の所有者は誰なのか、ということだ。
本当に「同僚Aから取り上げた」のか。
本当は「自分で買ったもの」ではないのか。
被告人の証言に反して警察の調書には、「被告人が自分で買ったと自白した」と記載がある。
これに関する被告人の言い分。
警察での取調べではAのことを話さずに、覚醒剤は拾ったと言った。
事件発覚当時、Aは治療施設でドラッグリハビリ中だった。
そしてAがもう少しで社会復帰できる段階まで更生していることを、被告人は知っていた。
いまAの名前を出して警察に捕まってしまったら、リハビリを中断することになる・・・。
被告人はAを更生させたかったがゆえに、入手先を隠していたのだと言う。
・・・なかなか侠気があるじゃないか。
しかし警察は、もちろん拾ったなんて話を信用しない。
「お前が買ったんだろ」の一点張りで被告人を攻め落とそうとする。
自白を迫られ続けて、被告人はしまいにヤケクソになっちゃった。
「じゃあそういうことにしておいてください。もうどうでもええっすわ」
これで自白が成立した。

・・・長い長い被告人への質問タイムがやっと終わった。
どうでもいい情報と大事な情報が、全部いっしょくたで、ゴチャゴチャだ。
それらを整理するのに、こっちの脳味噌もショート寸前。
そして、ここまでですでに一時間半を費やしていたため、時間切れになってしまった。
論告は次回持ち越し。
うまくやれば、たぶん30分くらいですんだのではないだろうか。
ダメ男の被告人への質問の仕方や内容には、あまりにも戦略がなさすぎた。
被告人はたぶん悪いヤツじゃない。
ちょっぴりガラは悪いけど、おひとよしでいいヤツっぽい。
でも残念ながら彼の印象は、「前後の脈絡なくグダグダしゃべる関西弁の男」になってしまった。
しかし、これは彼の責任ではない。
ちょっと可哀想。

被告人や証人に、どんな質問をして、どんな言葉を導き出すか。
それが裁判長やみんなにどんな心象を与えるのか。
これって、弁護士の腕次第なんだ。

ダメ男くん、とっちらかってる場合じゃない。


(*注)前回の傍聴の中で被告人に対して「尋問」という間違った表現があり、早速監督からご指摘をいただきました。
被告人にはあくまでも「尋問」ではなく「質問」で、なぜなら被告人には黙秘権があるので「質問」しかできません。 [↑]
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